「咬み癖は治るのでしょうか」ということですが、結論から言えば、飼い主の犬に対する接し方を変えれば(=犬に対する飼い主の意識改革をすれば)、改善に向かいます。逆の言い方をすれば、今までの接し方を変えなければ、良くて現状維持か多くは悪化の道をたどります。なぜなら、今までの接し方が、目の前にいる犬の状態を作ってきたからです。
まず「権勢症候群」などの考えを頭からなくすことです。
「権勢症候群」は、海外でアルファシンドロームとして広まっていた考え方を90年代に誰かが日本語に訳したものです。しかしながら、2000年に入ってからこの考えに否定的な考え方が生まれています。
JAHAのインストラクター養成講座でも、かつてはアルファシンドロームを紹介していましたが現在ではなされていません。
さて、犬が飼い主を本気で噛みつく要因は、「権勢症候群」でないとすれば何なのでしょうか。
ここで重要となるのは、学習の心理学という分野からの視点となります。動物が特定の行動の頻度を高めるのは、その行動の結果「いいこと」が起きるか、「嫌なこと」がなくなるか、のどちらかです。すなわち、この視点から見ると、犬が飼い主を噛むようになるのは、噛んだ結果「いいこと」が起きるか、「嫌なこと」がなくなるか、のどちらかということです。そして、飼い主を本気で噛むケースは、後者。すなわち、噛むことで、不安や恐怖(=嫌なこと)がなくなるからに他なりません(噛まれれば飼い主は、今行おうとした行動をあきらめるということです)。
すなわち、飼い主に対して不信感を持っている、飼い主がすることに対して「不安や恐怖」を感じていると言うことです。
ご自身に置き換えて考えて下さい。例えば、誰かから手を握られたとします。その誰かが信頼関係のある相手であれば、手を握られても「どうしたの?」と感じるくらいでしょう。でも、不信感を抱いている相手だったらどうでしょう。あなたは必死にその手を払いのけようとするでしょう。バッグでも持っていれば、そのバッグで相手を叩くかも知れません。もし、かつてその相手に嫌なことをされた経験があるのであれば、近づくだけでバッグを振り回して相手を追い払おうとするはずです。
犬はバッグで相手を叩いたり、バッグを振り回したりして、相手の行動を阻止することも、負う払うことできません。彼らは、噛むという行動でそれをするのです。
ここまでのお話しをご理解いただけたのであれば、今一度ご自身のご質問をお読み下さい。
犬にとって「嫌なこと」をどれだけなさってきたかにお気づきになるはずです。
飼い主は自分にとって嫌なことをするはずがない、という信頼関係をぜひ築く努力をなさって下さい。
そのためには、冒頭に申し上げたように、飼い主の犬に対する接し方を変える(=犬に対する飼い主の意識改革をする)ことです。叱ること、まして肉体の苦痛を与える罰は、信頼関係構築にとってマイナスにこそなれ、決してプラスにはならないことも深く理解なさることです。
具体的にどうするかは、こうしたQ&Aで簡単にお答えできるものではないこともご理解下さい(獣医学的な問題があることも可能性としてはあります)。早急にお近くのJAHA認定のインストラクターにご相談なされることです。
JAHAしつけインストラクター養成講座委員会 |